桃の天然水が日本たばこ産業(JT)から発売されたのは1996年のことでした。発売当初は微炭酸タイプや複数のフレーバーを展開するなど試行錯誤が続いていましたが、1998年春に歌手の華原朋美をイメージキャラクターに起用したことで風向きが一変します。
カメラに向かって屈託のない笑顔で放たれた「ヒューヒュー!」「桃の天然水、飲んでる?」というフレーズは、瞬く間に女子中高生を中心とする若年層の間で大流行しました。当時の制作関係者の証言や手記によると、この象徴的なフレーズは厳密に作り込まれた台本ではなく、現場で彼女が見せたリラックスしたリアクションや天真爛漫なキャラクターをそのまま活かした演出でした。タイアップ曲となった華原朋美の『LOVE BRACE』や『daily news』『as A person』などのヒット曲とともに、テレビを点ければ必ず目にする国民的アイコンへと駆け上がったのです。
飲料業界の統計データによると、起用直後の1998年度における販売実績は約1600万ケース(約3億8000万本)を突破。店頭では品切れが相次ぎ、競合各社がこぞって類似のフレーバーウォーターを投入する契機となりました。単なる清涼飲料水の宣伝にとどまらず、歌姫のプライベートやファッションと完全にシンクロしたマーケティング手法は、平成カルチャーを代表する大成功事例として記録されています。