「江戸川のSG・G1は、SG常連のトップランカーではなく、江戸川専門のベテランを買え」というのはボートレースファンの間で語り継がれる鉄則です。なぜ全国屈指のトップレーサー(A1級)が、江戸川の舞台ではB1級の地元レーサーに完敗する事態が起こるのでしょうか。
その背景には、ボートの挙動に対する「身体感覚と心理的バウンダリー(限界点の見極め)」の違いがあります。普段、住之江や丸亀などの静水面を主戦場とする選手は、水面が平坦であることを前提とした極限のスピードターンを磨き上げています。しかし江戸川のうねりに対してそのスピードで突っ込めば、艇が浮き上がり転覆・落水の危険に直結します。
対して、「江戸川鉄兵」の異名をとる石渡鉄兵選手をはじめ、作間篤選手、前沢丈史選手、大池佑来選手といったボートレース江戸川の江戸川巧者たちは、波の山と谷を見極め、艇のバウンドを体全体でいなす特殊技術「波乗り」を体得しています。かつてある名手は手記やインタビューで「江戸川のターンは、平水面のスピード勝負ではない。暴れ馬の手綱をどう抑え、水面と対話できるかの勝負だ」と語っています。
格上選手が無意識にブレーキをかけターンが膨らむ瞬間、水面を知り尽くした江戸川巧者は最短距離を鋭角に差し込みます。出走表の「全国勝率」が7点台のA1選手であっても、江戸川勝率が4点台であれば危険な人気艇となり、逆に全国勝率5点台のB1選手が江戸川勝率6点台後半を誇るなら、迷わず本命・対抗に据えるべきです。