ネット上の考察には一定のパターンがある。その中でも「遠藤真弓=一方的な被害者」という読み方には注意が必要だ。確かに真弓は娘・彩花からの家庭内暴力(DV)の被害者であり、夫・啓介の無理解にも苦しんでいる。しかし彼女が高橋弘幸を殺害した行為には、明らかに「自分より弱い立場の人間に向けた感情の転嫁」が含まれている。弘幸は真弓にとって、社会的地位も経済力も上にある「勝ち組」の象徴だった。その人物を殺害した行為は、単なる防衛や衝動ではなく、長年蓄積された屈辱と嫉妬の爆発として描かれている。
また「ドラマ版は原作に忠実」という認識も誤解を生みやすい。ドラマ版は原作のプロットをほぼ踏襲しているが、演出上の都合で時系列が再構成されており、特に終盤の真弓と彩花の和解描写はドラマオリジナルの要素が強い。原作では母娘の関係はもっと冷たく、複雑なまま物語が閉じられる。「ドラマ版を見たから内容は知っている」という人ほど、原作のラストに驚かされる。