通勤電車で一般的なロングシートと、観光列車や郊外路線で多く見られるクロスシート。この2つの配置には、単なる乗車人数の調整を超えた明確な狙いがある。混雑時の乗客の流動性を高め、ドア付近の滞留を防ぐためには線路と平行に並ぶシートが威力を発揮する。一方で、進行方向を向く座席は視界の開け方によって移動中の心理的負担を軽減する効果を持つ。
こうしたシート設計の背景にあるのが人間工学のアプローチだ。着席時の骨盤の傾きや、加減速時にかかる慣性力を分析し、身体への負担を最小限に抑えるクッション材や背もたれの角度が追求されている。公益財団法人鉄道総合技術研究所などの研究機関では、長年にわたり乗客の体圧分散や揺れに伴う疲労度を科学的に測定。短時間の乗車でも姿勢が崩れにくく、長時間の移動でも腰を痛めにくい構造が生み出されているのだ。