『イケパラ』を語る上で欠かせない最大のハイライトが、劇中で幾度となく繰り広げられた通称「中津劇場」です。芦屋瑞稀(堀北真希)を男と信じ込みながらも惹かれてしまい、「自分は同性愛に目覚めてしまったのではないか」と思い悩む中津の脳内葛藤を、猛烈なテンポの独り言と激しい身体表現で可視化したこの演出は、当時の視聴者に凄まじいインパクトを与えました。
制作関係者の証言や当時のインタビューによると、台本に書かれていたのは「中津、激しく葛藤する」「パニックになる」といった大まかなト書きが大半であり、台詞の間や畳み掛けるようなボケ、細かな身振り手振りの多くは生田斗真自身のアドリブとプランニングによって生み出されていました。舞台演劇で培ってきた確かな発声力とコメディの間合いが、テレビドラマという枠組みの中で完全燃焼した瞬間でした。
さらに、この中津劇場を完璧なエンターテインメントに昇華させたのが、絶妙なタイミングでカットインする大塚愛の挿入歌「PEACH」です。中津のパニックが最高潮に達した瞬間にイントロのキャッチーなメロディが流れ、カメラワークと生田斗真のコミカルな表情がシンクロする演出は、テレビドラマにおける音と演技の融合としてひとつの完成形を提示しました。