無痛分娩の安全管理を劇的に見直す契機となったのが、京都や大阪、東京などの産婦人科クリニックで過去に発生した一連の重大医療事故です。特に京都府の医院で発生した事案では、出産時に麻酔投与を受けた母体が意識不明となり、重度の低酸素脳症に陥った後に死亡、生まれた子どもにも重い障害が残るという痛ましい結果を招きました。
その後の民事訴訟や刑事責任を巡る司法判決では、医師の過失が明確に認定されています。裁判で焦点となったのは、主に以下の3点です。
第一に、麻酔用チューブ(カテーテル)が誤って脊髄を包むくも膜の内側や血管内に入り込んでいないかを確認する「テスト投与」の不備。第二に、投与直後に不可欠な血圧測定や酸素飽和度モニターによる母体のバイタル監視を怠ったこと。そして第三に、母体の呼吸停止や心停止という急変時に、迅速な気道確保や心肺蘇生プロトコルが機能しなかったことです。
これらの判決は、無痛分娩事故の本質が「麻酔自体の不可抗力な副作用」ではなく、「投与後の厳重な観察義務違反と緊急救命体制の不備」にあることを司法の場から突きつけました。