黒柳氏が結婚という枠組みを選ばなかった背景には、20代前半に経験した「ある出来事」が決定的な影響を与えています。
NHK放送劇団に入団し、女優としてのキャリアを歩み始めた20代の頃、彼女には真剣に結婚を考えた婚約者が存在していました。家具を買い揃え、結婚式の準備が具体的に進んでいた段階で、黒柳氏はふと強い違和感を覚えたと回顧しています。
「この人と結婚したら、私は毎日靴下を洗い、お茶を淹れ、相手の人生の影として生きることになるのだろうか。私にはもっとやりたい仕事があるのではないか」
当時の日本社会において、女性が結婚することは「家庭に入り仕事を辞めること」とほぼ同義でした。自身の使命と表現者としての情熱を押し殺すことに耐えられなかった彼女は、周囲の猛反対を押し切って婚約を解消しました。
その後も、永六輔氏や井上ひさし氏ら昭和を代表する文化人との深い友情・交友関係がありましたが、それらは互いの才能を認め合う戦友のような絆でした。彼女にとって結婚とは「自分らしさを手放してまで手に入れるべきもの」ではなく、「自分の足で立ちながら、魂で深く結びつく相手とだけ育むもの」だったのです。