日本の社会において、子どもや若者が社会に適応できないとき、真っ先に向けられるのは「親の育て方」や「しつけ」の問題という眼差しだ。「過保護だから自立できない」「親が甘やかしたから常識がない」といった言説は、当事者やその家族を追い詰める刃にもなる。
しかし、発達障害を持つ子どもの子育てにおいては、状況がより複雑だ。感覚過敏や社会的な困難を抱える子どもを守るため、親が先回りして環境を整え、結果として外部からは「過保護」に見える状態が作られるケースは少なくない。加穂子のケースもまさにそれだ。母親の過剰な介入は、彼女の困難を覆い隠すシェルターとして機能していた一方で、本人が自らの特性と向き合い、必要な合理的配慮やスキルを獲得する機会を奪っていた側面も否定できない。