海沿いから車を東へ10分ほど走らせると、黒塗りの板壁や土蔵が連なる「岡田地区」にたどり着く。江戸から昭和初期にかけて知多木綿の生産地として栄えたこの集落では、築100年を超える木造長屋や古民家を再生した古民家カフェが点在する。
軋む廊下を進み、手入れの行き届いた坪庭を眺められる座敷へ腰を下ろす。梁や柱に刻まれた無数の傷が、この場所が刻んできた歴史の長さを物語る。提供されるのは、地元の無農薬野菜をふんだんに使ったランチや、知多産の柑橘を使った手作りケーキ。冷たいコンクリートの都市空間では決して味わえない木の温もりが、訪れる者の心を解きほぐしていく。歴史的景観を壊すことなく、現代の感性で息を吹き込むオーナーたちの手腕には目を見張るものがある。