昭和から平成にかけての名作刑事ドラマでは、昭和のベテラン刑事やハードボイルドな主人公がベージュのトレンチコートを羽織るシーンが定番でした。しかし、本物の刑事服装においてトレンチコートが着用されることは現在ほぼ皆無といえます。
その最大の理由は、「街中で目立ちすぎてしまう」という致命的なデメリットにあります。刑事の主任務である尾行や張り込み、不意を突く接触において、過度に個性的でシルエットが大きいコートはターゲットに警戒心を与えてしまいます。また、狭い捜査用覆面パトカーの車内で裾が邪魔になり、咄嗟のダッシュや格闘の際に動きを制約してしまう点も敬遠される要因です。
実際の冬場の捜査員は、黒やネイビー、グレーといった無彩色のダウンジャケットや、アウトドアブランドの防風性に優れたショート丈アウターを愛用しています。ドラマ的な演出と現場の機能性の間には、安全面・実用面で大きな隔たりがあるのが現実です。