「あそこのカレーは、一度食べたら癖になる」——かつて常連客たちが口を揃えて語った独特のコクと刺激。その味を支えていたのは、妥協を許さない創業者・歴代シェフたちの並々ならぬ情熱だった。厨房の奥深くに保存されていた手書きのレシピノートには、季節や湿度に応じてミリ単位で調整されたスパイスの配合割合が細かく記録されていたという。
相模大野の駅前再開発に伴い、かつて小田急電鉄株式会社が主導した街の近代化と歩みを同じくするように、店は看板を下ろした。しかし、秘伝のデミグラスベースと特製ガラムマサラの製法は、密かに若手シェフへと受け継がれていたのだ。長年沈黙を守っていた元スタッフの独占証言により、今まで決して表に出てこなかった幻のスープ仕込みの手順や、秘伝のルウの熟成期間といった隠された歴史が、ついに白日のもとに晒されることとなった。