過度な脚色を排し、事実を誠実に積み重ねた本作は、日本のヒューマンドラマ作品に一石を投じた。感動を安易に演出するのではなく、一人の人間が生きた証を淡々と、しかし熱狂的に描き出す姿勢。この実話・ノンフィクションのアプローチは、昨今の映画産業においても高く評価されている。
フィクションでは到底描けない、偶然と必然が重なり合った生のリアル。部活に打ち込んだ経験がある者なら誰もが共鳴する汗の匂いや、挫折の苦み。それらが丁寧に編み込まれているからこそ、観客は物語に引き込まれ、自らの人生のあり方と重ね合わせる。映画というフォーマットが持つ記録性と感情の増幅力が、青年の遺したメロディとともに最高の形で結実したといえるだろう。