メインテーマ「あの夏へ」に言葉が与えられた瞬間、作品の持つセンチメンタリズムは最高潮に達した。久石譲が手掛けたピアノの叙情的なイントロ。それに続くメロディラインは、主人公・千尋が迷い込んだ神々の世界の切なさと、二度と戻らない少年時代の記憶を見事に可視化している。
作曲の舞台裏において、久石譲は緻密な音響構成を試みた。映画本編のテーマ曲として生まれた器楽曲に、後から歌詞を載せる手法だ。通常のアニメ楽曲制作とは一線を画すこのプロセスこそが、聴く者の心を締め付ける独特の余白を生み出した。歌詞に込められた「記憶の底にある名前を呼ぶ」というテーマは、人間の根源的な孤立感と救済を鮮やかに照らし出している。