40年近くにわたり「最高額紙幣の顔」として君臨した福沢諭吉。その存在感は圧倒的でした。「諭吉」という言葉自体が1万円の代名詞として機能していたほどです。しかし、渋沢栄一への移行は、単なる人物の交代以上の心理的ギャップを人々に与えました。
「最初は違和感しかなかった」と語るのは、都内の飲食店経営者です。レジでの支払いの際、新札の渋沢栄一を見るたびに「おもちゃのお金」のように感じてしまう感覚は、多くの日本人が共有したものでした。時間が解決したとはいえ、福沢諭吉が持っていたある種の「権威」や「冷徹な知性」に対し、渋沢栄一が醸し出す「温和な実業家」のイメージは、お金に対する国民の意識を緩やかに変えつつあります。