左京区といえば、京都大学をはじめとする学術の街としての顔を持つ。かつて貧乏学生たちが安くて旨い飯を求めて彷徨った路地裏で、この店はまさに救世主のような存在だった。カウンター越しに見える年季の入った鉄板、壁に貼られた味わい深いメニュー札、使い込まれたパイプ椅子。どれをとっても、現代の洗練されたチェーン店には絶対に真似できない時間の厚みが宿っている。
学生時代、金がない時はここに来てお好み焼き一枚で粘ったものだと笑うのは、30年ぶりに店を訪れたという元京大生の男性。店内に流れる時間はゆったりとしていながらも、どこか凛とした佇まいがある。ただ腹を満たすだけでなく、若者たちの夢や悩みを黙って受け止めてきた鉄板の熱気が、今も空間全体に満ち満ちている。