藤井隆之の代名詞とも言えるのが「青白磁(せいはくじ)」だ。青白磁とは、素地に微量の鉄分を含む釉薬を施し、還元焼成(酸素を絶った状態での窯焼き)を行うことで、淡い青緑色を発色させる高度な磁器技法である。
彼の青白磁作品は、単に美しい青を呈するだけではない。影が落ちる角度や、光が透過する厚みによって、万華鏡のように表情を変える。土の削り出しによって生み出されるシャープなエッジと、釉薬が溜まる部分の柔らかな青の濃淡。この光と影の相乗効果が、鑑賞者の視線を惹きつけて離さない。
微妙な釉薬の厚みが施すグラデーション
青白磁における最大の難関は、釉薬の塗布量と焼きのコントロールにある。数ミリの誤差が、作品の命運を分ける。藤井は自らの長年の経験と感覚を研ぎ澄まし、彫刻された素地の凹凸に完璧に沿う形で釉薬をのせる。その結果、彫りの深い部分には濃密な青が溜まり、浅い部分には透明感あふれる白磁の素地が透けて見える、美しいグラデーションが立ち現れるのだ。