事件の発端は、あまりにも日常的な一コマだった。被害者となった男性がSNS上に投稿した何気ないプライベートの報告。しかし、そこに添えられていた不適切な画像と公序良俗に反する言動が、ネットユーザーの過剰な好奇心と正義感に火をつけた。
当時のネット空間は、匿名掲示板の「祭り」と呼ばれる暴走エネルギーが最も猛威を振るっていた時期である。写真の背景に映り込んだ微細な景色の解析、過去の投稿履歴の照合、さらにはファイル共有ソフトを経由した漏洩データの特定作業が、見知らぬ群衆の手によって昼夜を問わず行われた。結果として、一人の人間の生活基盤そのものが数日のうちに完膚なきまでに瓦解したのである。