日本のメディア環境において、地上波民間放送が担ってきた社会的役割は極めて大きい。全国津々浦々へ均質な情報を届けるインフラとして機能してきたテレビ放送だが、スマートフォンの普及とライフスタイルの細分化に伴い、決まった時間に居間のテレビ前に座る生活リズムは過去のものになりつつあった。その構造的課題を打破したのが、株式会社TVerが主導する地上波同時配信の本格展開である。
今や主要プライム帯の番組を中心に、放送とほぼタイムラグなしでインターネット配信が行われる体制が整った。単なる「場所を選ばないテレビ」にとどまらず、Xなどのソーシャルメディア上でリアルタイムに感想を投稿しながら楽しむ「分散型のお茶の間」が形成されている。コンテンツを同期して消費する興奮は、オンデマンド全盛期だからこそ、希少で価値ある体験として再評価されている。