彼女の最後にして最高の輝きを放ったのが、映画『午後の遺言状』(1995年公開)である。この作品の撮影時、彼女は末期の末期ガンに侵されており、自らの死期が近いことを深く悟っていた。
身体をむしばむ激痛に耐えながらカメラの前に立ち、死と生を見つめる老女優の姿を見事に演じきった。病魔を覆い隠し、一瞬一瞬に女優としての全魂を注ぎ込む圧倒的な佇まいに、現場のスタッフや共演者は息を呑んだという。作品の完成を見届けた後、彼女は静かにこの世を去った。新藤兼人がカメラを通して愛する妻の最期の美しさを捉えたこの映画は、日本の邦画ヒューマンドラマの金字塔として今なお語り継がれている。