原作者である藤子不二雄Ⓐは、生前、人間のブラックな部分や社会の不条理をテーマにした作品を数多く残した。『笑ゥせぇるすまん』もその代表作であり、喪黒福造というキャラクターには、高度経済成長期からバブル期にかけて狂奔する日本社会への皮肉が込められていた。そしてそのメッセージは、低成長と格差社会にあえぐ現代において、さらにリアルな響きを持っている。
藤子Ⓐ氏が描こうとしたのは、勧善懲悪のヒーローショーではない。どんなに真面目に生きている人間であっても、一歩踏み外せば簡単に転落してしまうという、日常のすぐ裏側にある「奈落」である。喪黒福造の存在は、私たちが普段目を背けている「自分自身の弱さ」を直視させるための、文学的な装置なのだ。