天野の里の豊かな森を抜けて神域に足を踏み入れると、まず参拝者を迎えるのが神池に架かる見事な「輪橋(太鼓橋)」です。
この輪橋は、豊臣秀吉の側室である淀殿が寄進したと伝えられる由緒ある建造物です。水面に映える鮮やかな朱色と、天に向かって大きく弧を描く優美な曲線は、神社のシンボルとして親しまれています。神様が渡る橋とされますが、参拝者も実際に渡ることが可能です。急な傾斜を一段一段踏みしめて渡る行為自体が、神前へ進む前に心身の穢れを祓い清める禊(みそぎ)の儀礼的意味を持っています。
輪橋を渡り、楼門(重要文化財)をくぐると、静寂の中に荘厳な「本殿4棟」が横一列に並び立っています。いずれも一間社春日造(いっけんしゃかすがつくり)としては日本最大級の規模を誇り、木造建築の粋を極めた意匠が施されています。
- 第一殿(国宝):丹生都比売大神(諸悪・災難を祓い除け、農業や産業を導く女神)
- 第二殿(国宝):高野御子大神(空海を高野山へ導いた開運・導きの神)
- 第三殿(重要文化財):大食津比売大神(気比神宮から勧請された食物・農耕・商売繁盛の神)
- 第四殿(重要文化財):市杵島比売大神(厳島神社から勧請された財宝・芸能・航海安全の神)
本殿の背後には、北条政子が寄進したと伝わる「光明真言曼荼羅碑」などの中世石造物が点在し、平安から鎌倉、室町、江戸へと受け継がれた祈りの厚みを肌で感じることができます。