「オリンピック」という同一の名称を受け継ぎながらも、古代五輪と近代五輪の間には根本的な思想と構造の違いが存在します。両者の本質的な相違点を理解することは、近代五輪が背負った役割を知る上で欠かせません。
古代オリンピックは、ゼウス神への信仰を軸とした「ギリシャ人・自由民・男性」のみに許された極めて閉鎖的・宗教的な祭礼でした。競技期間中は「神聖休戦」が結ばれましたが、それはあくまで神域での安全な祭典挙行を目的とした一時的な措置でした。
対して近代五輪は、人種、宗教、国籍、性別を問わない普遍的な「国際平和と青少年の教育」を大原則に掲げています。その根幹を成すのが、IOCが定める「オリンピック憲章」に記されたオリンピズムの精神です。憲章では、スポーツを通じて友情、連帯、フェアプレーの精神を培い、平和でより良い世界の構築に貢献することが至上命題とされています。
この世界の一体化を象徴するのが、白地に青・黄・黒・緑・赤の輪が連なる「五輪シンボル(オリンピックマーク)」です。1914年にクーベルタン自身が考案したこのマークは、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オセアニア、アメリカの五大陸の団結を表しています。また、地色の白を含めた6色は、当時の世界各国の国旗に必ずいずれかの色が含まれていたことから選ばれており、「世界中の人々を包摂する平和の象徴」としての強い願いが込められています。