俳優としてキャリアを積み重ねる中で、浩市は「三國連太郎の息子」というレッテルと闘い続けました。デビュー当初は「三國の息子だから使われた」という心ない陰口に晒されながらも、実力で日本アカデミー賞をはじめとする数々の賞を獲得し、主演俳優としての地位を確立していきます。
二人の関係に決定的な転機をもたらしたのが、1996年に公開された映画『美味しんぼ』での直接対決でした。この作品で二人は、料理を通じて激しく対立する希代の美食家・海原雄山(三國)と、その息子である東西新聞記者・山岡士郎(佐藤)という、まさに現実の二人を投影したかのような親子役を演じることになります。
『美味しんぼ』の製作発表記者会見は、映画界の歴史に残る緊張感に包まれました。三國が浩市を「佐藤くん」と呼び、浩市もまた三國を「三國さん」と呼んで一歩も引かない姿勢を見せたのです。撮影現場で対峙した際、浩市は父の圧倒的な存在感と底知れぬ演技力を肌で体感し、三國もまた一人前の役者へと成長した息子の眼差しを真正面から受け止めました。この共演こそが、長年凍りついていた父子の氷解の決定打となりました。