順風満帆に見えた人気店がなぜ営業終了を決断したのか。ファンの間では様々な憶測が飛び交ったが、その核心は過酷を極めた労働環境と職人としての飽くなきこだわりとの葛藤にあった。
芝田の店舗は限られた極小スペース。押し寄せる何百人もの客に応えるため、厨房では深夜から翌日の夕方まで休むことなく仕込みと焼成が繰り返されていた。船井シェフが目指すクオリティを維持しながらこの殺人的な生産量を続けることは、現場の職人たちの肉体を限界まで削ることを意味していた。妥協したパンを大量生産してブランドを薄めるくらいなら、最高の状態のまま一度リセットする。あの閉店劇は、自らのクラフトマンシップを守り抜くための覚悟の決断だったのである。