なぜこのような事態に陥ったのか。ここで一度、創業からの経緯解説をしておこう。1995年、創業者ニック・ジョーンズがロンドンのグリーク・ストリートにあるレストランの上階に開いた小さなスペースが、すべての始まりだった。メディアやアート業界の人々が集い、深夜まで議論を交わすためのプライベートな空間は、瞬く間に熱狂的な支持を集めた。
だが、親会社であるメンバーシップ・コレクティブ・グループ(MCG)が米ニューヨーク証券取引所に上場を果たしたことで、状況は一変する。株主から求められるのは、四半期ごとの会員数増加と売上成長だ。「選ばれし者のためのクラブ」という理念と、「果てしない会員拡大」という上場企業の宿命。この矛盾こそが、現在のブランドの変質を決定づけた根本的な要因である。