現在では誰もが当たり前のように「秋桜」を「コスモス」と読みますが、この当て字を日本中に定着させた最大のきっかけこそが本作です。
もともと植物のコスモスは明治初期に日本へ渡来し、秋に咲く桜のような花姿から「秋桜(あきざくら)」と名付けられていました。さだまさしは本作のタイトルを決める際、日本の秋の情緒を漢字で表現しつつ、美しい響きを持つ「コスモス」と読ませる手法を採用。この文学的なアプローチが楽曲の大ヒットとともに広く認知され、国語辞典に当て字として記載されるほどの社会的影響を与えました。
歌詞で描かれているのは、秋の淡い日差しが降り注ぐ縁側で、嫁入りを翌日に控えた娘が母と過ごすかけがえのない時間です。縁側でアルバムを開き、幼い頃の思い出を語り合いながら、母がふと零す「ありがとう」の言葉。娘は自分をひとりで育て上げてくれた母の苦労と深い愛情を思い、思わず涙をこぼしそうになります。
「こんな小春日和の 穏やかな日は あなたの優しさが 浸みて来る」というフレーズに象徴されるように、押しつけがましい感情表現ではなく、淡々とした日常の所作の中に凝縮された母娘の絆と感謝が、聴く者の胸を強く締め付けます。実生活において母の手ひとつで育てられ、家族への愛着が人一倍強かった山口百恵自身のバックボーンとも重なり、歌詞の一言ひとことが真実味を帯びて響くのです。