活字離れやメディアの転換が叫ばれる出版業界において、その重層的なテキストは新たな読者層を獲得している。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでは、絶版となっていた初期短編や実験作が手軽にアクセス可能となり、若い読書家たちの間で再評価の波が広がる。
さらに注目すべきは、Audibleなどのオーディオブック市場との相性の良さだ。奥泉の文章は、視覚的な情報量もさることながら、音読された際のイントネーションやリズムが極めて綿密に計算されている。声優やナレーターの「語り」によって立ち現れる物語世界は、紙の読書とは異なる立体的な恐怖と幻惑をもたらしている。