この病態の最も狡猾な点は、出血直後ではなく「時間差」で襲来することにある。発症の危険期間はくも膜下出血の発症後4日目から14日目。とりわけ7日目から10日目前後に最大ピークを迎える。外科的治療が完治したように見える時期と重なるため、患者や家族にとってはまさに青天の霹靂だ。
前兆は見逃しやすい。わずかな意識の混濁、つじつまの合わない返答、あるいは普段より反応が鈍いといった微細な精神症状から始まる。軽度の言語障害、片側の手足に力が入らない脱力感、不意の微熱や血圧の急激な変動も危険信号だ。「手術の疲れだろう」という油断は命取りになる。これらのサインが現れた段階で、脳内ではすでに不可逆的な虚血性ダメージが進行している可能性が高い。