講談社をはじめとする媒体で幾度となく繰り広げられてきた、小説家・京極夏彦との濃密な対談は、日本の文壇・カルチャー批評における特異なマイルストーンとして知られている。憑物落としを軸に怪異の構造をロジカルに解体する京極の視座と、臨床の現場から人間の生の不可解さを突きつけるアプローチは、時に火花を散らし、時に見事なポリフォニーを奏でてきた。
民俗学的な怪異と、近代精神医学が扱う狂気。両者が交差する地点で見えてくるのは、人間がいかに「物語」を必要とし、同時にその物語によって自らを縛り付けてしまうかというアイロニーだ。二人の対話は、ミステリファンのみならず、人間の心という迷宮に挑むすべての探求者にとって、今なお尽きない刺激を与え続けている。