ストリーミングサービスの台頭は、映像編集の文法にも劇的な変革を迫っている。NetflixやAmazon Prime Videoなどのプラットフォームがオリジナルコンテンツを席巻する中、視聴者のアテンションをいかに維持し、同時に作家性を損なわずに世界市場へ届けるかという課題が浮上した。
香川知子はこの地殻変動を極めて冷静に受け止めている。倍速視聴やスキップ機能が一般化する現代にあって、彼女が目指すのは「早送りさせない強度を持った映像」だ。ただテンポを速めるのではなく、1フレームごとの情報密度を高め、観客を映像の深淵へ引きずり込む力。劇場のスクリーンからリビングのモニター、タブレット端末に至るまで、いかなる視聴環境でも揺らがない物語の骨格を彼女は提示し続けている。