大衆文化は長年、サイコパスという存在に異常なまでの執着を見せてきた。映画『羊たちの沈黙』に登場するレクター博士のような不気味な天才像は、観客を恐怖させると同時に魅了した。しかし、あのようなドラマチックな怪物像は、現実の姿を覆い隠す煙幕に過ぎない。
近年、Netflixをはじめとする配信プラットフォームでトゥルー・クライム(実録犯罪)ドキュメンタリーやサイコスリラーが爆発的な視聴数を記録している。デヴィッド・フィンチャー監督が手掛けたドラマ『マインドハンター』のヒットに見られるように、視聴者の関心は単なる恐怖体験から「彼らはなぜ平然と嘘をつき、人を傷つけられるのか」というメカニズムの探求へとシフトした。だが、映像作品が描く劇的なシリアルキラーは氷山の一角だ。実社会に存在する危険人物の大半は、返り血を浴びることなく、合法的な領域で他人の人生をじわじわと破壊していく。