今回の投票で最大の焦点となったのは、安全保障体制の再構築と気候変動対策基金の創設をめぐる一連の法案パッケージだ。スイス連邦議会が数カ月にわたる激しい対立の末にまとめた折衷案に対し、有権者側は「透明性と実効性が不十分である」として激しく反発。国民表決(レファレンダム)の成立によって、直前の土壇場で国民投票の場へと持ち込まれた経緯がある。
対立の溝は深かった。都市部のIT層や若い世代は環境投資の優先を訴えたのに対し、地方の農家や伝統的産業の従事者はこれ以上の税負担増に激しい抵抗を示した。双方が譲らない激闘の末、最終的に支持を集めたのは「目前の生活防衛」を前面に押し出したグループだった。複雑に入り組む利害関係の中で、直接投票という手段が持つ凄みと困難さが改めて浮き彫りになった格好だ。