2012年12月2日午前8時頃、日本中を激震させる悲劇が突如として発生した。中央自動車道上り線の笹子トンネル内において、天井に設置されていた重さ数十トンに及ぶコンクリート製天井板が約138メートルにわたって突如崩落。走行中の車両が下敷きとなり、9名の尊い命が失われるという痛ましい笹子トンネル天井板落下事故である。安全と信疑の対象であった高速道路で起きた崩落は、社会に計り知れないショックを与えた。
事故の直接的な原因は、天井板を上部スラブから吊り下げていたアンカーボルトの脱落と固着用樹脂の施工不良、そして長年の振動による経年劣化の見落としであった。この未曾有の人災を受け、管理主体である中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)は猛烈な批判に晒されることとなる。国土交通省は直ちに全国の同種トンネルに対する緊急点検を指示。当時の太田昭宏国土交通大臣が陣頭指揮を執り、従来の「遠望目視」に依存していた検査体制を根底から覆す予防保全型への転換を強力に推進した。この凄惨な事故は、日本の高速道路維持管理事業全体のあり方を永遠に変える分岐点となったのである。