物語の核をなすのは、他でもない「フードミステリー」という挑戦的な新ジャンルである。舞台となる香川県といえば、誰もが知る讃岐うどんの聖地だ。しかし本作が焦点を当てるのは、名物の華やかな側面ではなく、麺の歴史の裏側にひっそりと佇む異色の怪異や口伝の数々である。
出汁のレシピに秘められた古代の暗号、特定の土地でしか語られてこなかった奇妙な符牒。それらが緻密な構成で解き明かされていく過程は、上質なミステリー小説を紐解くようなスリルに満ちている。伝統的な食文化の深層へ潜るカメラの眼差しは、観客を未知の知覚体験へと誘うだろう。