今日マチ子のキャリアを語る上で、決して避けて通れない金字塔が『cocoon』だ。沖縄戦におけるひめゆり学徒隊に着想を得て描かれた本作は、これまでのステレオタイプな戦争漫画の文法を根底から覆した。
そこに描かれるのは、勇ましい兵士でも、わかりやすい教訓でもない。ただ可愛らしいワンピースを着て、恋や甘いお菓子に胸をときめかせていたはずの少女たちが、理不尽な暴力の嵐に巻き込まれ、虫のように脆く失われていく肉体の現実である。その圧倒的な描写力と倫理的な誠実さは高く評価され、第18回手塚治虫文化賞新生賞を受賞することとなった。戦争という巨大な悲劇を、少女たちの皮膚感覚を通して描き切った本作は、現代を生きる私たちに「生きていることの痛みと重み」を突きつけ続けている。