暗号化されたメッセージングアプリの普及は、犯罪の民主化とも呼ぶべき事態を招いた。かつては物理的な接触や特殊な人脈を必要とした「闇の仕事」が、今や数回のタップで手に入る。発信元が特定されにくいという技術的な裏付けが、利用者に「捕まるはずがない」という根拠のない全能感を与えているのだ。
警察庁の最新のデータによれば、SNSを経由した特殊詐欺や強盗の下見行為で検挙された容疑者の大半が、「絶対に身元は割れないと指示役に言われていた」と供述している。国家権力の監視が届かないとされるデジタルアジトの中で、若者たちは自らの行為がもたらす現実の痛みに想像力を働かせることができなくなっている。