本作をここまでの強度を持つ社会派サスペンスに仕立て上げたのは、監督を務めたファン・ドンヒョクの圧倒的な演出力と、キャスト陣の並々ならぬ覚悟だ。美術教師役として主演を務めたコン・ユは、過剰なヒーロー性を排し、恐怖と正義感の間で葛藤する生々しい人間像を体現した。人権センターの活動家を演じたチョン・ユミも、抑圧された悲憤を内に秘めた迫真の演技でスクリーンを支えている。
作品の製作・配給を手掛けたCJ ENMの決断も大きかった。刺激的かつ政治的リスクをはらむテーマでありながら、日和ることなく過酷な現実を描ききる姿勢を貫いた。暗く重苦しいトーンの中に張り詰める静謐な緊張感。登場人物たちの息遣いひとつまで計算し尽くされた映像表現が、観客の心に逃げ場を与えない圧迫感を生み出している。