「肉は切り方ひとつで味がガラリと変わる」。店主は静かに、しかし熱を込めてそう語る。同じ一頭の肉であっても、筋の走り方や脂のノリは部位ごとにミリ単位で異なる。機械による大量カットではなく、すべて職人の手作業によって肉の目を見極めながら包丁が入れられていく。
赤身の旨味を最大限に引き出す絶妙な厚み、火の通りを計算し尽くしたカット。職人の細やかな仕事が施された肉は、ロースターの上で均一に火が通り、噛み締めた瞬間の肉汁の広がり方に決定的な差を生む。妥協を許さない仕込みの作業こそが、皿の上に表現される美しさと味覚の奥行きを支えているのだ。