静寂の寺に響き渡る、鐘と太鼓、そして笛の音。重要無形民俗文化財に指定されている「壬生大念仏狂言(壬生狂言)」は、言葉を一切発しない仮面劇だ。中興の祖である円覚上人が、仏教の教えを分かりやすく広めるために始めたと伝えられている。
演者は全員、独特の異形な面を付け、パントマイムのような独特の身振り手振りで物語を展開する。圧巻は演目『炮烙割(ほうらくわり)』だ。舞台から何十枚もの素焼きの皿が次々と落とされ、豪快な音を立てて砕け散る。その瞬間、境内に走る緊張感と歓声。伝統を守り抜いてきた保存会の熱量と、観客の一体感が交錯する時間は、他のどんなエンターテインメントにも代えがたい。