かつてのサードウェーブ運動がもたらした「浅煎り・酸味の強調」というドグマから、日本のコーヒー文化はさらなる進化を遂げた。現在のトレンドを象徴するのは、圧倒的な多様性と個性の開放だ。焙煎技術はAIによるデータプロファイリングと熟練職人の感性が融合し、豆本来が持つテロワール(風土の特性)を驚くほど立体的に引き出すことに成功している。
フルーティーで華やかなエチオピアのナチュラル製法豆から、赤ワインを思わせる重厚なコンプレックスを備えたアナエロビック(厭気性発酵)プロセスのコロンビア豆まで、ラインナップはかつてないほど豊かだ。日常の喧騒から数分だけ離れ、カウンタースツールに腰掛けてドリップの雫が落ちる音に耳を澄ませる。そんな贅沢な時間が、私たちのすぐ近くの街角に用意されている。