関係者取材によって、本作の根幹をなす驚くべき撮影手法とストーリーの骨格が浮かび上がってきた。舞台は、猛烈な爆弾低気圧に見舞われ孤立無援となった巨体コンテナ船。荒波が船体を容赦なく打ちのめす中、指令塔である船内で不可解な事件が発生する。通信機能が切断され、乗組員たちの疑心暗鬼が頂点に達するプロセスが、容赦のないカメラワークで捉えられている。
内部情報によれば、監督はあえてカットを掛けずに10分以上に及ぶ長回しを多用したという。逃げ場のない密室で人間の自我が剥がれ落ちていく瞬間を捉えるため、演者には台本を超えた即興のリアクションが求められた。緊迫した空間で交錯する視線とセリフの応酬は、観客にまるで自らが船内に取り残されたかのような錯覚を起こさせる。