2022年に公開され、空前の大ヒットを記録した『きさらぎ駅』は、まさに彼のキャリアにおける大きな転換点だった。主演の恒松祐里が演じる主人公が、異世界へと繋がる無人駅の謎に挑む姿は、一人称視点(POV)のアクションゲームを思わせる映像体験として描かれた。
従来の怪談映画といえば、湿り気のある静かな恐怖や、じわじわと追い詰められる演出が主流だった。しかし、彼は画面の向こう側の恐怖を「体感」させる手法を選択した。視聴者が主人公の目線となり、何が起こるかわからない曲がり角を曲がる瞬間。その圧倒的な臨場感こそが、観客の心をつかんで離さなかった理由である。