八木の「ブラジルの人聞こえますか」という問いかけに対し、科学はどのような答えを出すのでしょうか。物理学および地球物理学の観点からこの現象を徹底的に検証すると、2つの衝撃的な真実が浮かび上がります。
まず1つ目は、「人間の肉声が地球の裏側に届く確率は0%」という音波伝播の物理的限界です。大気中を伝わる人間の声(音波)は空気の分子を振動させる縦波ですが、距離が離れるにつれて大気による粘性摩擦や幾何学的な拡散によって急速に減衰します。大声を張り上げても通常の屋外環境では数百メートル、気象条件が完璧に整ったメガホン使用時でも数キロメートルが限界です。地中を通そうとしても、地殻やマントル、外核(液体金属)といった超高密度の層によって音波は遮断・吸収され、地表から地中へ声のエネルギーが抜けることはありません。
歴史上、地球を何周もした音波は1883年のクラカタウ火山大噴火や2026年のフンガ・トンガ海底火山噴火による超低周波気圧波(インフラサウンド)程度であり、生身の人間の肺活量では不可能です。
そして2つ目の真実は、「日本の真裏はブラジル本土ではない」という地理的事実です。地球上で特定の地点の正反対に位置する場所を「対蹠地(たいせきち)」と呼びますが、東京の対蹠地を計算すると、南緯35度41分・西経40度19分の「ウルグアイ沖の南大西洋(海の上)」になります。沖縄など日本の一部地域からはブラジル南部沿岸に近接するものの、日本の大部分の真裏には大地すら存在せず、広大な海が広がっているのが実情です。