苦悩の梨と全く同じ運命をたどった有名な拷問器具が「鉄の処女(アイアン・メイデン)」です。女性の姿を模した棺の中に無数の針が仕込まれ、罪人を閉じ込めて刺し殺すというこの器具も、19世紀末に哲学者や収集家が創作した完全なフェイクであることが判明しています。
中世ヨーロッパの拷問器具における「虚と実」を比較すると、以下の明確な違いが浮かび上がります。
中世の司法で実際に行われていた拷問は、手足をロープで引っ張る「追放刑用の吊り下げ具(ストラッパード)」や「ラック(引張台)」など、構造がシンプルで再利用が容易なものが中心でした。苦悩の梨のような複雑なネジ細工を施した器具は、当時の鍛冶技術やコストから見ても、使い捨ての拷問現場には極めて不自然な道具だったのです。