旅行者を混乱させる一番の要因は、地理的な近さと写真データの混同だ。人々に慣れ親しんだ鹿が無数に暮らしているのは、京都ではなく奈良県に位置する奈良公園である。古くから春日大社の神使として保護されてきたニホンジカたちが、ここでは人々の暮らしのすぐ横でごく自然に生きている。
空前の盛り上がりを見せるインバウンド観光産業の中で、京都と奈良を短期間で回るルートは王道中の王道だ。SNSへ写真を投稿する際に位置情報を「Kyoto」と間違えて登録したり、二つの都市の魅力を並列して紹介する自然・トラベルドキュメンタリーの映像イメージが記憶の中で混ざり合ったりした結果、いつしか京都に鹿の公園があるという誤解が定着してしまったのだ。