いま、都心部を中心に爆発的な広がりを見せているのが、「会話を一切禁じた共有空間」だ。従来のカフェやコミュニティスペースとは異なり、利用者は事前にプロフィールも明かさず、挨拶すら交わさない。
ルールは極めてシンプルだ。ただ同じ空間に座り、それぞれが自分の作業や読書、思索に没頭する。この「パラレル・プレゼンス(並行存在)」と呼ばれるスタイルは、Z世代や単身のナレッジワーカーを中心に強い支持を集めている。一人で家にいると集中力が続かず孤立感に苛まれるが、他人と積極的にコミュニケーションを取ると脳が疲弊する。その中間に位置する「ゆるやかな気配の共有」が、現代人のメンタルを支える新しい社会インフラとなりつつある。
週に3回このスペースに通うという女性は話す。「誰かと喋りたいわけじゃないんです。ただ、見知らぬ誰かが同じ空間で何かに取り組んでいる音や息遣いを感じるだけで、不思議と心が落ち着いて作業が進む。この絶妙な距離感こそが、今の生活に一番必要でした」