この邸宅の歴史を紐解くと、近代日本を揺るがした政界の巨頭たちの影が見え隠れする。「平民宰相」として国民に親しまれ、日本の政党政治の礎を築いた原敬もまた、この場所を深く愛した一人だった。激務の合間を縫ってこの地に滞在し、静寂の中で国家の未来に思いを馳せていたと伝えられている。
政治的緊張感が張り詰める日々の中で、原敬にとってこの邸宅は唯一のプライベートな聖域だった。茶室で立てるお茶の香りや、静かに移ろい行く庭の景色が、彼の疲弊した心を癒やしたのだろう。激動の時代を生きた政治家たちの生々しい息遣いが、築130年を超える木造建築の柱や欄間にいまも深く刻み込まれている。