北岳の魅力は、急峻な岩壁とそこに咲く可憐な花々にある。特に、世界中でここにしか自生しない「キタダケソウ」は、初夏の登山者を魅了してやまない。しかし、その足元では深刻な事態が進行中だ。
地球温暖化の影響で積雪量が減少し、かつては登ってこられなかったニホンジカが標高3,000メートル付近まで出没するようになった。彼らは貴重な高山植物を容赦なく食い荒らす。ボランティア団体や行政による防鹿柵の設置が急ピッチで進められているが、広大な山肌すべてを守り切ることは不可能に近い。生態系のバランスは、今まさに崩れかけている。