劇中で圧倒的な絶望として描かれる「ミミズ (すずめの戸締まり)」は、廃墟の扉から現れ出でる無秩序な天災の猛威そのものだ。その暴走を喰い止めるには、自我を捨てた要石の犠牲が不可欠となる。ダイジンが日本各地の「後ろ戸」へと向かった一連の行動は、初見の観客には災いを撒き散らす悪意ある行為のようにも映った。だが、真相は真逆だったのだ。
彼は新たな要石の候補地、あるいは閉じるべき危険な扉へと鈴芽を必死に導いていたに過ぎない。自らが負うべき重荷を解放された歓びを噛み締めつつも、神としての本能的な使命を完全には捨てきれなかった悲しき存在。その支離滅裂とも思える無邪気な挙動こそが、解釈不能な神性のリアリティを見事に描写している。