大相撲の年寄名跡をめぐり、長年もっとも世間の関心を集めてきたのが「一体いくらで売買されているのか」という金銭問題です。結論から言えば、かつての売買相場は1億5000万円から3億円前後で推移していたことが、過去の民事裁判の記録や当事者の法廷証言によって裏付けられています。
1990年代から2000年代にかけて表面化した複数の名跡トラブル(立浪、春日山、陣幕などをめぐる訴訟)では、名跡証書の引き渡しや所有権確認を争う過程で、具体的な売買・譲渡対価が法廷で明らかになりました。バブル経済全盛期には5億円近くまで高騰したケースが報じられたこともあり、師匠の遺族への生活補償金や退職慰労金という名目で、巨額の金銭授受が慣習化していた歴史があります。
しかし、2014年に日本相撲協会が公益財団法人へ移行したことを契機に、制度は根本的な見直しを迫られました。協会は「年寄名跡の売買・無許可譲渡の禁止」を明確化し、すべての名跡証書を協会が一括管理する体制を敷きました。名目上の「売買市場」は制度上消滅したものの、実際には名跡を保有する先代親方や遺族に対する顧問料、あるいは部屋施設・不動産の引き継ぎ対価といった名目で、現在も水面下での高額な金銭調整が存在していると相撲ジャーナリストや関係者の証言で指摘されています。